【なぜ今、短歌ブーム?】話題の歌人岡本真帆さんに聞く「短歌の作り方」
「平日の明るいうちからビール飲む ごらんよビールこれが夏だよ」など、一瞬で人の心をつかむ歌の数々が話題の歌人岡本真帆さん。フルリモート会社員として働きながら創作を続ける岡本さんに、短歌の魅力と創作のコツを聞きました。
*VERY2022年9月号「ママたちの短歌ブーム」より。
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*掲載中の情報は誌面掲載時のものです。
\第一歌集が異例の売り上げ/
岡本真帆さん
歌人。1989年生まれ。高知県の四万十川のほとりで育つ。未来短歌会「陸から海へ」出身。会社員として働くかたわら、2022年に刊行した、第一歌集『水上バス浅草行き』で各方面から注目を集める。
「自分にも飼い慣らせない動物を抱きしめて寝るような孤独だ」
「3、2、1、ぱちんで全部忘れるよって今のは説明だから泣くなよ」
まずはSNSの投稿欄に
送ってみる
「ほんとうにあたしでいいの?ずぼらだし、傘もこんなにたくさんあるし」など、多くの人の心に残る短歌を発表し話題を集める歌人・岡本真帆さんに、短歌を作り始めたきっかけや創作のヒントを聞きました。
──現在、岡本さんは故郷である高知県へ引っ越し、リモートワークをしながら創作を続けています。どんな瞬間に歌が浮かぶのですか。
東京にいる頃は通勤途中に歌が浮かぶことが多かったです。電車や徒歩で移動しているとき、なんとなくちょっとぼうっとしているというか、半分別のこと考えてるようなときがあると思います。お風呂に入っているときなんかもそうですね。そこでふっと歌のネタみたいなものが浮かぶんです。iPhoneにメモすることもありますし、ノートに手書きでブレーンストーミング的に、キーワードをたくさん書いていってそこから歌を作ることも。一発でぱっとできる歌もありますが、多くは言葉を選び推敲を重ねます。
──いつ頃から歌を詠むようになったのでしょう。
短歌との最初の出会いは大学生の頃です。雑誌「ダ・ヴィンチ」の穂村弘さんの連載「短歌ください」を読みました。ここに投稿する読者の人たちはみんなすごく歌が上手いんですよね。「こんな短歌が作れるなんてすごい。私はこれだと思える表現手段すら見つけられなくて、もがいているのに……」と掲載されている方と自分との差にショックを受けていました。その後社会人になり、コピーライターとして働く中で、クライアントワークだけでなく自分の作品も作りたい。今ならできるかもしれないと思えるようになり、歌を詠むようになりました。木下龍也さんの『つむじ風、ここにあります』、笹井宏之さんの『えーえんとくちから』などの歌集にも影響を受け、雑誌やSNSに自作の歌を投稿し始めたのもこの頃です。
──岡本さんの短歌は多くの人が情景を思い浮かべたり、それぞれの思い出を回想するような切なさや親しみやすさが魅力です。
誰かに話したことはないけれど、みんなも感じているような瞬間をつかまえたいと思っています。私の歌はよく、生活に寄り添っているとか、日常の些細な瞬間を歌にしていると言われます。言葉にできなくても多くの人が覚えている情景や感情を歌にしたいので、伝わりやすさ、わかりやすさに対しては自覚的でありたいです。
──自分でも短歌を作ってみたいという読者にアドバイスはありますか?
難しいことは考えず、「まずは作ってみて人に見せる」のが一番の近道だと思います。誰にも見せないつもりだと完成形に持っていくのが難しい気がして。友達でも家族でも誰でもいいので見てもらう。それが恥ずかしいなら匿名のアカウントでもいいのでツイートしたり、雑誌やWEBなどの投稿欄に歌を送ってみるといいですよ。そのうちに短歌の韻律に自分が慣れていく感覚がわかると思います。いきなり歌を作るのは難しそうなら他の人の短歌に触れてみるのもおすすめです。好きな歌を書き写したり、まとめてみたりすると自分がどんな歌に惹かれるのか共通点が見えてきます。
──歌集の中に読者はがきが入っています。切手を貼って投函するというアナログなスタイルであるにもかかわらず多くの感想が来るとか。どんなことが書いてありますか?
ぐっときたコメントをひとつ例として挙げますね。「落ち込む友人を励ます言葉を探したくて買いました。読み進めるうちに、自分の中にある言葉で声をかけようと思い、さっき話してきました。なんていうか、ありがとう。」とメッセージだけを書いてくださった方がいました。感想というわけではないですが、私の本を読んだその人自身の言葉で、友達を励ましたというエピソードにぐっときました。歌集を手に取ってくれたいろんな場所に住むいろんな人の人生がギュッと詰まってる感じがして、はがきを見ると、いつも胸がいっぱいになるんです。
『水上バス浅草行き』(ナナロク社・¥1,870)
歌集としては異例の発売即重版。岡本さんの魅力がつまった第一歌集。
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*VERY2022年9月号「ママたちの短歌ブーム」より。
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