^{『ホットスポット』（日本テレビ系）公式ホームページより}

いよいよ大詰めを迎える2025年冬ドラマ。このクールは完成度の高い作品が多く、話題作以外にも面白いドラマが目白押し。その中から、ドラマオタクのコラムニスト小林久乃と元JJ編集長イマイズミが「これは最後まで観たい！」という作品を5本厳選しました。

【コラムニスト小林久乃が選んだ5本】
①ホットスポット（日曜22時30分／日本テレビ系）
②べらぼう～蔦重栄華乃夢噺～（日曜20時／NHK総合）
③それでも俺は、妻としたい（土曜24時／BSテレ東）
④まどか26歳、研修医やってます！（火曜22時／TBS系）
⑤バニラな毎日（月～木曜22時45分／NHK総合）

【元JJ編集長イマイズミが選んだ5本】
①東京サラダボウル（火曜22時／NHK総合）
②ホットスポット
③御上先生（日曜21時／TBS系）
④クジャクのダンス、誰が見た？（金曜22時／TBS系）
⑤法廷のドラゴン（金曜21時／テレ東系）

やっぱりバカリズム脚本は伏線が凄かった！

元JJ編集長イマイズミ（以下、イマ）：今回、5本に絞れました？ 泣く泣くランキングから落としたドラマが10本くらいあるんですけど（笑）。

コラムニスト小林久乃（以下、小林）：冬ドラマって春や秋に比べてパッとしないことが多かったのに、今クールは大充実ですよね。私も脱落しないで継続しているドラマがたくさんあります。

イマ：唯一かぶったのは『ホットスポット』だけでしたね。

小林：私がわざわざあげる必要もないくらい、巷では話題のドラマですけど、やっぱりこれは外せなかった。

イマ：それにしても、「高橋劇場」がこんなに長く続くとは思わなかったですよね。

小林：角田晃広（高橋孝介役）が想定外の大活躍！ 気が付いたら相関図でもド真ん中に。一応、主役は市川実日子（遠藤清美役）なのに（笑）。

イマ：ハゲたくないからという理由で頭脳系の能力を使わなかったり、自分を良く見せるためにちょこっと嘘を盛ったり、とにかくセコイ。そして、そのキャラクターが角田にドハマりしてます。

小林：大河ドラマは『いだてん～東京オリムピック噺～』（2019年）と『どうする家康』（2023年／ともにNHK総合）と2本も出てるし、『半沢直樹』（2020年）、『大豆田とわ子と三人の夫』（2021年／TBS系）といった話題作でも重要な役を任せられてるし、本業のコントで培った演技力は確かですよね。コメディアンで心に残る演技をするという意味では、私の中でいかりや長介や明石家さんまクラスです。

イマ：長期宿泊客の村上博貴（小日向文世）が実は未来人だったというサプライズもあって、今後の展開がますます読めなくなってきましたね。

小林：私は伏線回収とか考えずに楽しく観てます。日曜の夜に笑いながら過ごすのにピッタリだなって。

イマ：私はSNSやネットの考察を見ながら、いちいち画面止めたりして最低２回は観ます。妻や娘が観ている時もついでに観てるので、１話あたりの視聴回数はとんでもないことに（笑）。

小林：ぼけーっと観ても、じっくり観ても面白さが変わらないドラマってそうそうないから、バカリズムって凄いですよね。

NHKは良質なドラマの宝庫だった！

イマ：私が、その『ホットスポット』よりいいなと思ったのは『東京サラダボウル』。奈緒と松田龍平の、俳優として一番美味しいところを味わえるドラマだと思います。明るく前向きでクルクル表情が変わる鴻田麻里（奈緒）と、感情表現があまりないけど実は熱い思いを秘めている有木野了（松田龍平）は、それぞれにピッタリな役どころ。

小林：二人の対比は観ていて飽きないですよね。出てくる外国人俳優も魅力的な人ばかり！

イマ：本国でも高い演技力を評価されている俳優をキャスティングしてるみたいです。

小林：最近の刑事ドラマって、特殊能力で事件を解決する設定が多いけど、この作品は犯罪や捜査をリアルに描いているのがいいですよね。

イマ：飯テロドラマとしても超優秀で、初回のサソリの揚げ物や豚の脳みそ炒めはアレでしたけど（笑）、その後に出てきたベトナム料理や韓国料理は本当に美味しそうでした。そして、有木野が警察を辞めるきっかけになった事件の重要人物・阿川博也（三上博史）の登場で、ストーリーがぐっとスリリングな展開に！

小林：前半は泣けるエピソードが多かったけど、後半にいくに従ってサスペンス要素が強くなってきているので、最後まで目が離せないですね。

イマ：小林さんは、『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』を2位にあげていますが、アイデアひとつで道を切り拓いていく重三郎（横浜流星）に毎週わくわくします。

小林：彼はアイデアだけじゃなくて、ちゃんと実現する能力が高い。吉原細見（遊郭・吉原のガイドブック）を売るために遊女の情報を可能な限り詰め込むという発想は、われわれが雑誌で死ぬほど細かく写真やキャプションを入れていたのと通じます。

イマ：今考えると、よくあんなにたくさん入りましたよね。モデルカットが5センチくらいの大きさでずらーっと並ぶなんてザラだった（笑）。

小林：重三郎の出版業での活躍とあわせて、田沼意次（渡辺謙）たちが繰り広げる幕府内の権力闘争もあって、このドラマを「ビジネス大河」と呼びたいです。

イマ：大河ではおなじみの合戦がなくても、これほど緊張感を保っているのは、脚本家・森下圭子さんの手腕ですね。

小林：資料が少ない中で魅力的な重三郎像を作り上げた横浜流星や、出てくるだけで画面が締まる渡辺謙も印象的なんですけど、一番はやっぱり小芝風花（瀬川役）です。

イマ：始まる前は花魁役をやるにはちょっと色気が足りないかなーと思ってました。どうしてもランチパックが思い浮かんじゃって（笑）。

小林：色気はもちろん、気風の良さや遊女の哀愁まで見事に表現しています。今年から所属事務所が変わって（オスカーからトップコートへ移籍）、心機一転、気合が入ってると思いますよ。

イマ：まあ、関係なくはないか（笑）。そして、このドラマでは、吉原が花魁道中やお座敷遊びのような華やかな面だけじゃない、性風俗産業であることを正面から描写しているのもNHKの覚悟を感じます。

小林：昨今は「上納」というワードが世間を騒がせていますが、江戸時代から続く性の商品化について考えさせられます。

イマ：瀬川の運命を握る鳥山検校（市原隼人）も登場しましたが、やはり豪華キャストの出演は大河ドラマの醍醐味のひとつですね。

小林：第5話で川に落ちて行方不明になった唐丸（渡邉斗翔）はおそらく写楽や北斎といった天才絵師として再登場するはず。今からどんな俳優がキャスティングされるか楽しみです！

壮大なテーマの学園ドラマとクスッと笑える夫婦ものがランクイン

小林：続いて、イマイズミさんが3位にあげたのは『御上先生』ですね。事前に予想してた、不登校とかいじめとか学園ドラマのあるある展開になりませんでしたね。

イマ：教科書検定など日本の教育改革がテーマで、思ったより壮大な物語に（笑）。とはいえ、やっぱり生徒が主役になっているドラマで、出演している若い俳優たちがホントに素晴らしい。特に奥平大兼（神崎拓斗役）の演技は図抜けてると思います。

小林：窪塚洋介の息子（窪塚愛流／次元賢太役）が窪塚すぎませんか？

イマ：たしかにお父さんの顔がチラつきますね（笑）。

小林：私は松坂桃李が演じる御上先生という絶対的な存在があるからこそ、生徒たちの演技が活きるんだと思います。淡々とした物言いだけど、しっかり生徒たちの心をつかむ感じは先生像としても新しい。

イマ：ところで迫田孝也（溝端完役）、良くないですか？ 毎回目が離せないんですけど。

小林：いいですよねー、迫田さん。上の人間に振り回されて右往左往する小物っぷりは絶品です。さすが日曜劇場に愛された男（笑）。

イマ：生徒たちが抱えるトラブル、御上が引きずる兄との過去、官僚と学園の綱引き、加えて冴島悠子（常盤貴子）と弓弦（堀田真由）の母娘関係など、ストーリーが複雑に入り組んでいて、毎週見入っちゃいます。

小林：ちゃんと頭を使って観ないといけないから疲れるんですよね、このドラマ…。

イマ：これが終わった後に始まる『ホットスポット』でほっこりしてください（笑）。

小林：あのお風呂で回復したいわー（笑）。

イマ：そして、私はランキングに入れなかったけど、『それでも、俺は妻としたい』はホントに面白いですよね。原作も良かったけど、映像化されてさらにリアリティーが増したというか。

小林：私、「このドラマ面白い」っていろんな人に宣伝してるんだけど、誰も観てないのよ（笑）。

イマ：BSテレ東ですからね…。私はTVerで観てるんですけど、スマホでこっそり観るくらいがちょうどいい（笑）。妻・チカ（MEGUMI）が夫・豪太（風間俊介）に向ける言葉の刃が鋭すぎて、毎回震えあがっています。

小林：だって旦那は売れない脚本家で年収10万円ですよ？ なのに、仕事もしないくせに性欲だけはありあまってるなんて（笑）。豪太はとにかく卑屈で、余計な一言が多くて、いつも変なデザインのTシャツ着てるのもなんか腹が立つ！

イマ：風間くんは『べらぼう』でも一筋縄じゃいかない人物・鶴屋喜右衛門を演じていますが、もう普通のいい人役は回ってこないんですかね？（笑）。

小林：古くは『それでも、生きていく』（2011年／フジテレビ系）でサイコパスの殺人犯、最近は『カムカムエブリバディ』（2021年／NHK総合）でヒロインの額の傷を見て逃げ出す男など、人畜無害そうな顔なのに実はクズ男・ダメ男というギャップが出るから、ついキャスティングしちゃうんでしょうね。

イマ：このドラマは、原作者でもある足立紳監督の自宅でロケをしてるんですよね。

小林：へー、そうなんだ！ だから、ドキュメントを観ているような気になるのか。そして、不登校気味の息子・太郎を演じている嶋田鉄太くんが上手すぎる！

イマ：演技なのか素なのかわからないくらい自然ですよね。それにしても、どぶろっく好きすぎるでしょ、太郎は（笑）。

小林：ゲラゲラ笑いながら気楽に観られるホームドラマは貴重なんです。ドロドロ不倫や復讐劇が多い深夜ドラマの中に咲いた一輪の花ですよ、これは。

考察勢が虜になるサスペンスと新人研修医の成長ストーリー

小林：イマイズミさんは『クジャクのダンス、誰が見た？』を4位に挙げていますが、これも『御上先生』くらい頭を使うドラマですね。

イマ：そろそろ終盤に差し掛かっているのに、次から次へと出てくる謎が全然解決されないんですよね…。そして、放送中の提供画面に現れるモールス信号がヒントになっているという、考察勢が喜びそうな凝った仕掛けも。

小林：いやー、今クールのTBSドラマはとにかく疲れる！（笑）。

イマ：ただ、一番の見どころは広瀬すず（山下心麦役）ですね。小林さんも『阿修羅のごとく』（2025年／Netflix）で彼女の演技を絶賛していましたが、心麦のふとした時に見せる寂しげな表情や芯の強さを感じる目力など細かい表現が素晴らしい。なんかもう、俳優として別のステージに上がった感じがします。

小林：話は変わるけど、最近のドラマ界はリリー・フランキー（山下春生役）に頼りすぎじゃない？ お正月のスペシャルドラマ『スロウトレイン』（TBS系）も出てたし、今クールのドラマ『ペンション・恋は桃色３』（フジテレビ系）にも出てるし。

イマ：リリーさんがイラストレーターだったこと、みんな忘れてると思います（笑）。

小林：小説『東京タワー ～オカンとボクと、時々、オトン～』（2005年／扶桑社）でブレイクする前、私が勤めていた出版社にも出入りしてたんですけど、飄々とした雰囲気はその頃から変わってないです。

イマ：イラストレーター、文筆家、そして俳優と多才ですよね。ガツガツした感じが一切ないのも大人として憧れます。

小林：まだ自分が売れてない時期でも若いクリエイターたちをサポートする優しいところもあって、とにかくモテるんですよ。

イマ：ますます憧れる（笑）。そんなリリーさんが演じる山下春生が遺した手紙に書かれていた5人のうち、まだ4人が明らかになっていません。これ、ちゃんと最後に回収できるのかな…。

小林：原作は最近発売されたKiss4月号（講談社）で完結したみたいなので、読んじゃえばいいじゃないですか。

イマ：なにその悪魔のささやき（笑）。

小林：そして、私が４位にあげたのは『まどか26歳、研修医やってます！』です。

イマ：私は初回で脱落したんですけど、そんなに面白いんですか？ どうしても芳根京子（若月まどか役）が新人研修医に見えなくて…。

小林：私も、どうせドジっ子研修医のドタバタ劇でしょ？ と思って観始めたけど、芳根京子のコメディー演技が素晴らしいんですよ。ストーリー的にも、いろんな科をローテーションで回る研修医という設定は見ていて飽きないし、お客さん扱いの研修医と最前線でバリバリやってる先輩医師との対比も面白いんですよ。

イマ：その研修医の中に吉村界人（桃木健斗役）がいるのが新鮮でした。『地面師たち』（2024年／Netflix）ではトイレで惨殺されるし、『ホットスポット』では嫌なクレーマー役だったし、普通の人を演じているの、初めて見た（笑）。

小林：キャストの中でも私が注目してるのは、その『地面師たち』にもちらっと出ていた赤堀雅秋（西山正樹役）です。

イマ：舞台系の俳優ですよね。あんまりテレビドラマに出てるの見たことないかも。

小林：とても印象深い演技をする俳優で、今後、吉田鋼太郎みたいにブレイクする気がしてます。主役以外のキャラ一人一人がしっかり立っているのも、このドラマの見どころの一つ。ドラマ後半は研修医2年目になって、まどかがどんなふうに成長していくのか見守っていきたいです。

異色のリーガルドラマとほっこり癒し系ストーリーに注目

イマ：冬ドラマでノーマークだったのに面白かったのは『法廷のドラゴン』です。元棋士の天童竜美（上白石萌音）が弁護士に転向して、弁護士事務所の若き所長・歩田虎太郎（高杉真宙）とバディを組んで事件を解決していくストーリーなんですけど、高杉真宙のコメディー演技が抜群にいい！ オーバーアクションなのに全然嫌味じゃないんです。

小林：やっぱり最近事務所変わったからじゃないですか？（スパイスパワーから個人事務所設立）

イマ：え、またその話？（笑）。一応、リーガルドラマなんですけど、私は気楽に見られるホームドラマとして楽しんでいます。パラリーガルの乾利江（小林聡美）も入れた3人のわちゃわちゃも愉快だし、竜美の両親である辰夫（田辺誠一）と香澄（和久井映見）との家族団らんのシーンもほっこりするし。いつもは変な人に振り回される役が多い上白石萌音が、今回はちょっと変わった子の役なのも新鮮です。

小林：ほらー、イマイズミさんも『クジャク』や『御上先生』ばっかりじゃ疲れちゃうんでしょ？（笑）。

イマ：バランスよく観るのが健康に良いんですよ（笑）。最終章となる第７・8話では竜美のライバルだった兎羽を演じる白石麻衣が登場するので、ラストに向けて盛り上がること間違いなしです！

小林：そして、最後に私が推したいのは『バニラな毎日』。今やってる朝ドラがアレなんで（笑）、この夜ドラの15分が毎日の楽しみです。

イマ：いいですよねー、このドラマ。パティシエの白井葵（蓮佛美沙子）は経営難で自分が開いた洋菓子店を閉じることになるけど、突然現れた料理研究家・佐渡谷真奈美（永作博美）にお菓子教室を開くことを勧められ、そこで出会う人々をスイーツで癒していくというじんわりとした感動を呼ぶストーリー。

小林：永作博美が演じる佐渡谷の明るくておおらかなキャラクターも魅力的です。白髪を隠してないのも自然で好感が持てるんですが、ribbonの永作博美がもうそんな年になったのかと思うと感慨深いです…。（過去、アイドルグループ「ribbon」のメンバーとして活動していた）

イマ：それ知ってる人、確実にアラフィフ以上ですよ（笑）。

小林：ストーリーもいいけど、出てくるスイーツもどれも美味しそうで、つい食べたくなっちゃうんですよね。

イマ：小林さんがスイーツ食べてる印象薄いな…。どっちかっていうと酒のつまみ的な（笑）。そういえば最近、ノロウイルスで倒れてましたよね？

小林：あれはホント辛かったー。それをきっかけにお酒を控えてるんだけど、そしたらやたら体調いいし頭もクリアになるし、やっぱり健康第一ですよ！

イマ：このドラマは体というより、心の健康を取り戻すお話ですが、最終週は葵がパティシエの命ともいうべき右手を怪我してしまいます。

小林：真面目な性格で手を抜けずに自分を追い込んでしまった過去がある葵が、どうやってこの試練を乗り越えていくのか。そこがラストの見どころですね。ちなみに蓮佛美沙子も最近事務所を移籍しましたよ。

イマ：移籍話、もういいですって（笑）。

小林久乃（こばやし・ひさの）コラムニスト、編集者。正々堂々の独身。中学生から地上波ドラマを愛して30年以上、筋金入りのオタク。好きが高じてついには『ベスト・オブ・平成ドラマ！』（青春出版社刊）を上梓した。ラブストーリーが好きで、特に禁断の恋がテーマとなると視聴熱が俄然、盛り上がる。公式HPはhttps://hisano-kobayashi.themedia.jp

元JJ編集長イマイズミ　女性誌『CLASSY.』『JJ』の編集長を歴任。１クールの地上波ドラマを全録画するようになったのは、編集長になった13年ほど前から。「仕事で新しい俳優、タレントさんを覚えるため」というのが理由だったけど、見事に大ハマり。ホームドラマとラブコメ好き。韓国ドラマもやや中毒。

イラスト／lala nitta