高校生、小学生の３人の子どもを育てながら、女優としても輝きを放つ広末涼子さん。毎月〝思春期ママ〟たちと思いを共有する場となる連載エッセイ。今回は、「勝負の日に子供をピークに導くには…」がテーマです。

▼前回の連載は
広末涼子さんが語る「親離れ、子離れ」。概して離れられないのは、親のほう…!?

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子どもと同化して熱くなってない!? 大切なのは、見守ること

受験期間中にできるお父さん、お母さんの仕事は

※笑顔でいること
※余計なことを言わないこと
※子どもが元気に、気分よく受験に臨める環境を作ってあげること

です。

我が子をよく見て、呼吸を合わせてあげてください。親の心配顔は子どもを不安にさせます。リラックスできる環境をつくってあげてください。

こう仰ったのは、私の高校時代の恩師。「母校はもう一つの実家、いつも卒業生の味方です」というメッセージをくださった漆 紫穂子先生です。高校時代、芸能界での仕事をしながら一般の私立高校に通っていた私は、毎日勉強と撮影に追われ、下校後そのまま現場に向かい深夜まで撮影、時にはホテルで仮眠して登校することも。多忙で常に睡魔と闘う日々。

そんなある日、忘れもしない古典の授業中、迂闊にもウトウトしてしまった私は完全に寝落ちしてしまい、まさかのまさか、あろうことかそのまま椅子から転がり落ちてしまったのだった。当時、古典の先生であった漆先生はとても厳しく、生徒からも恐れられていた存在。そんな先生の授業中に眠ってしまうなんて、しかも、椅子から落ちるほど熟睡してしまったなんて……。

申し訳なさと情けなさと、疲れと、もう頭の中がぐちゃぐちゃになって涙が出てきてしまった私。教室の床が冷たいスケートリンクのように感じ、立ち上がることもできなかった私に、 「保健委員さん、広末さんを保健室に連れて行ってあげて」と、先生が一言。

間違いなく、体調不良ではなくただ寝てしまっていたことに気付いていたはずの先生からの意外な一言に、私は余計に涙が溢れてしまったことを覚えている。そんな厳しくも、子ども達それぞれをしっかり見てくれていた漆先生だからこそ、たくさんの受験生とその親を見てきた先生だからこその冒頭のアドバイスなのだな、と思う。

基本的に一般論でいうと、受験であれば、子どものやる気・勉強法・データが大切。スポーツや芸術方面での試合や発表会でも同様、それに加え、体調管理（睡眠時間の確保や食事の栄養バランス、本番前日には消化のいいものを食べさせる等）・会場までの経路や当日の天候などを含め、事前のシミュレーション・本人のケガや故障のケア・モチベーションの維持、などなど必要なことは盛りだくさん。

親は常に並走者で本人（子ども）と同じく走り続けなくてはいけないんだ！　と私は思ってきた。けれど、先生からの助言を知った時、ああ、親が本人と同化してしまってはいけないんだな……。一緒に熱くなるのではなくて、ちゃんと客観視して、見守って、導いてあげることが大事なんだな……。と、気付かされた。

最後に、漆先生の著書『伸びる子の育て方』の中にある〝保存版・受験期間に親がすべき、してはいけないチェックリスト〟より。

「どんな結果が出たとしても、これまでの過程で得たものは決して消えません。それは必ずお子さんの未来の宝物になります。試験が終わったら、どうか笑顔で、これまでがんばったお子さんと家族、そして自分自身をねぎらってあげてください」。

〈次回へつづく〉

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広末涼子

1980年高知県生まれ。14歳でデビュー後、CM、ドラマ、映画と数々のヒット作に出演。日本アカデミー賞をはじめ受賞歴も多数。初の書き下ろしエッセイ『ヒロスエの思考地図 しあわせのかたち』（宝島社）発売中。映画「あちらにいる鬼」が公開中。2023年前期、連続テレビ小説「らんまん」に出演。

モデル＆文／広末涼子 撮影／西崎博哉（MOUSTACHE） ヘア・メーク／MAKI スタイリスト／山本杏那 取材／奥村千草 ※情報は2023年1月号掲載時のものです。
【衣装クレジット】シャツ￥19,800〈シティ〉ロンパース￥51,700〈ステュディオス×トーガプルラ〉（ともにステュディオス カスタマーサポート）ピアス［右］￥17,600 ピアス［左］￥17,600 リング［右手人さし指］￥31,900 リング［左手中指］￥27,500 ネックレス￥36,300（すべてボーニー／エドストローム オフィス）

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